蛋白尿多くても、その後に蛋白尿が減少したIgA腎症の予後は良好です。

蛋白尿が1gを超えるIgA腎症の場合、その後も1gを超えた状態が続くと予後は極めて不良ですが、当初蛋白尿が多くても、その後に蛋白尿が減少したIgA腎症の予後は良好です。


1)J Am Soc Nephrol 22: 752–761, 2011  ( https://jasn.asnjournals.org/content/22/4/752 )

Figure 3  パネルB   をご覧ください。
赤丸 (●) が 尿蛋白が全経過で1gを超えないまま経過したIgA腎症です。末期腎不全は20年後、KM解析で5%程度です。
一方で、青の四角(■)が尿蛋白が1g以上が持続したIgA腎症(61例) であり、20年で約7割が末期腎不全に至ったいます。1g以上の尿蛋白が持続するIgA腎症の予後は極めて不良です。

そして、見にくいのですが、紫の三角()が当初 尿蛋白が1gを超えていたものの、その後に尿蛋白が減少した群です。Nは60ですがKM解析で末期腎不全に至った症例は2%です。

 

初期の蛋白尿が多くても その後に尿蛋白が減少した場合、初期から尿蛋白が少ない症例とリスクは同等であることは、下記論文でも報告されています。

(2)  Nephrol Dial Transplant (2012) 27: 1479–1485 ( https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21965586 )  

(3) J Am Soc Nephrol 18: 3177–3183, 2007  (https://jasn.asnjournals.org/content/18/12/3177?ijkey=f064c663db1238b26bb4ec8b9094a5228d59abce&keytype2=tf_ipsecsha) 

 

蛋白尿がどの程度までさがれば良いのか、という問題があります。

上記 論文 (3)では 

Patients who achieved complete remission of proteinuria (sustained level of <0.3 g/d with preserved CrCl) did not have a different rate of renal function decline than patients who achieved partial remission to <1 g/d (−0.17 ± 0.47 versus −0.13 ± 0.41 ml/min per 1.73 m2/mo, respectively; NS).

とされています。

/year とすると -2.04 ± 5.64  versus - 1.56 ± 4.92 ml/min per 1.73 m2/year  となり、どちらも平均値としては病的なレベルです。

一方 論文 (2) では Time average proteinuria (TA-P) において、 0.5g 以下と 0.5 g ~ 1.0g で差があることが報告されており、

      TA-P <1.0         −1.0  (IQR  −3.5 to 1.4)    mL/min/1.73m 2 /year

      TA-P >1.0         −4.4  (IQR  −7.4 to −1.6) 

       TA-P <0.5        −0.4 (IQR  −3.0 to 2.1) 

       TA-P 0.5–1.0    −2.0 (IQR   −4.0 to 0.25)

とされており、尿蛋白は0.5以下を目指した方が良さそうです。

 

免疫抑制治療後の蛋白尿の程度と腎予後の関係では、より低い蛋白尿に到達した例で予後がよいことが報告されています。
おそらく、より低いレベルに達した方が、その後の再発のリスクが減ることを反映しているのでは、と考えています。

初期の尿蛋白よりも、経過中の尿蛋白が予後を強く規定していることは IgA腎症ガイドライン2017  にも記載されています➡️


免疫介入により腎機能予後を検証できたRCTは少数ですが、免疫介入により尿蛋白が減少することはRCTにて繰り返し報告されています。尿蛋白が1gを超えたIgA腎症の場合、自然寛解もありますが、頻度は低く、免疫抑制治療を選択したほうが良いのでは、と思っています。