IgA腎症 初期蛋白尿の程度ごとの Time average proteinuria
IgA腎症では経過中の蛋白尿の平均 Time average proteinuria が予後を極めて強く規定しています。
生検時の尿蛋白が多いと、腎不全進行のリスクが高く、尿蛋白が少ないと腎不全進行のリスクが低い、という関係も認められますが、初期に蛋白尿が少なくてもその後に増加すれば予後不良であり、一方、初期に蛋白尿が多くてもその後に蛋白尿が減少すれば予後は良好です。
経過中の蛋白尿の平均は事後的・後方視的なデータであり、診断時に将来を見通すことはできませんが、
生検時の蛋白尿のレベルごとに その後にどのレベルのTime average proteinuriaとなったか、について
Leeらがの報告があります。原著では文章として記載されているものを表にまとめてみました。
腎生検を受けるかいなかの選択、免疫介入の必要性はどの程度か、など治療選択に重要なデータと思います。
〜 パーセントは初期蛋白尿を基準としています。
初期尿蛋白 0.5g 以下の場合、明らかな予後不良群であるTA> 1.0 となってしまう症例は4.6%、ゆっくりとした腎障害の進行リスクがある 0.5~1.0 となる症例は17%、腎機能悪化をほとんど認めないTA 0.5 で経過する症例が79%とされています。
〜 蛋白尿が少ないIgA腎症の予後についてはこちらのページもご覧ください。 ➡️蛋白尿の少ないIgA腎症 その後 何割が悪化するか?
一方、初期尿蛋白が1.0を超える群では、一部免疫抑制治療を受けたと症例も含め TA <0.5 で経過する症例は20%にすぎません。
初期尿蛋白が多い群では、免疫抑制治療を選択した方が良さそうです。
現在の日本では、扁摘パルスなどの免疫抑制治療の進歩により、初期尿蛋白が1gを超えていても尿蛋白が0.5g以下に至る症例が多数であることが報告されています。